ディープエコロジー ~ 故アルネ・ネス先生を偲んで



ヨーロッパのディープエコロジー思想の先駆けであった、
Arne Nessアルネ・ネスさんが亡くなられました。
御歳96歳、現代においては十分なご長寿でした。

私がシューマッハカレッジの大学院にいたときに、
アルネ・ネスさんが学校の講師として呼ばれ、
私たちは、特別に彼との対話の時間を頂くことができました。

その時にアルネ・ネスさんが強調されていたのは、
生命の「Intrinsic Value」。
なんと訳せばよいのでしょうか。
直訳すると、あらゆる生命に内在する本質的価値とでもなるのですが、アルネ・ネスさんは、そういった上辺だけの形而上的な言葉を超えた、心の体験でしか理解することのできない奥深い意味を込めて使われていたと思います。

アルネ・ネスさんが、Intrinsic Valueを感じ、
ディープエコロジー思想に傾倒していかれたのは、
彼が大学院生のときの理科の実験の時だったそうです。
熱っせられた薬剤の入ったビーカーの中に、
一匹の虫が突然飛び込んできたのだそうです。
ビーカーの中でもがく虫を、アルニ・ネスさんは、
何とかして助け出そうとしましたが、
何もできずに虫は死んでしまったそうです。
その短い時間に、アルネ・ネスさんは、
かつてない、衝撃にも似た、強烈な印象を受けたそうです。
そして、初めて生命のIntrinsic Valueというものを、
体験を通して心で理解したのだそうです。

彼は後に、生命のIntrinsic Valueを理解している状態について、
別の言葉でEcological Platformという言葉を作ったそうです。

シューマッハカレッジの専任講師のステファン・ハーディングは、
生命と宇宙の本源に触れ、それに基づいて研究したり、
行動したりしている人のことを、
“Ecological Platformに触れている人”と表現していました。

アルネ・ネスさんはもちろん、サティシュ・クマール、
ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ、ブライアン・グッドウィン、
ダライ・ラマ、・・・、今や沢山の人が仲間です。

これからの時代は、生命の本質を基本にした世界になるはずです。
こういった“Ecological Platformに触れている人”が、
時代をリードしていくことでしょう。

Schumacher College 留学記

30年におよぶシューマッハカレッジの活動は、前半期と後半期で大きく異なります。この留学記は、その前半期にあたる、サステナブルな社会を創るために必要な考え方や知見を学ぶことを目的に、世界的な研究者や思想家、活動家が数多く招聘され、世界各国から学生が集まり、サステナビリティの分野で世界的に知られた学び場だったありし日々の様子を書き残したものです。

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